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NME REPORT ~栄養経営士活動報告 Vol.6

業務改革と嚥下意識の向上に挑戦!

心疾患や血管疾患をはじめ、透析設備も構える急性期病院で栄養管理を行う、栄養経営士の畠山朋子さん(愛心メモリアル病院食事部栄養課)。周囲とのコミュニケーションを大事に取り組んだ、業務および意識改革について、お話しをうかがいました。

リーダーとなり、取り組んだ業務改革と環境改善

――栄養課の主任になられたときに、業務改革に取り組んだそうですね。

栄養経営士の畠山朋子さん
畠山朋子さん

新卒で当院に入職し、4年くらいたった頃、なかなか思い描くような活動ができず、管理栄養士の仕事へのモチベーションを失ってしまったことがありました。当時の上司に退職の意思を伝えたところ、引き止められて思い留まったのですが、数ヵ月後、その上司が退職してしまい、実質、私が栄養課のリーダーを務めることになったのです。

自信はなかったのですが、ちょうど栄養経営士の基礎講習の受講もきっかけとなり、「これまで抱えていた疑問や悩みをリセットし、新しい栄養課を作っていくチャンス」と捉え、まずは業務改革に取り組むことにしました。

――「業務改革」というと、まずは給食委託化が検討されるかと思いますが、給食体制はどのような状況だったのですか。

当院は全面直営体制で給食・栄養管理を行っており、委託化という選択は労力削減のための解決策としてもちろん俎上に上がりました。ただし、当院はかつて給食管理を委託していたものの、数年前に食事を重視する方針から厨房にホテルのシェフを迎え、直営に戻した経緯があります。何より、私自身が直営だからこそできる食事提供にやりがいを感じていたことから、給食は直営のまま他の業務を見直すことにしました。

発注方法の見直しや選択食の聞き取り日時の変更、納品書の処理方法など、慣例で行っていた業務を「これは必要かな?」と栄養課内で一つずつ見直し、思い切った削減や変更をしました。特に新入職員に必要な理由を説明できない業務は、すべて見直しました。業務が整理された分、栄養指導に時間を費やすことが可能となり、指導件数は従前の3.5~4倍に増加。さらに、新入職員への指導時間を確保できたことで、課内全員の業務の質がそろい、業務分担が可能になりました。

――厨房業務の改善についてはいかがでしたか?

当院では、事務職の部長のもと、栄養課と厨房を管轄する調理課が分かれている組織のため、改善の取り組みに当たっても別々に考えなくてはならないのかと悩むこともありました。でも、おいしい食事提供に連携は不可欠と考え、なかなかオモテには見えづらい厨房の状況について、意識的に上司や他部門に伝えるようにしました。厨房機器の不具合があれば写真にとって会議で報告するなど、自分を調理スタッフが働きやすい環境を整えるための“架け橋”であると思って動きました。

信頼関係を少しずつ積み重ねているなか、2018年9月に北海道胆振東部地震が発生しました。前例のない“ブラックアウト”にも見舞われましたが、私が指示を出さなくとも栄養課と調理課で迅速に話し合って対応することができました。2020年には、厨房職員から新型コロナウイルス感染症の陽性者が発生したのですが、その際も皆で協力し合って乗り切ることができ、あらためて取り組んできた方向性は間違っていなかったと実感しました。

嚥下内視鏡検査の導入を提案し、院内に浸透を図った

――院内や地域との関わりで取り組んだことはありますか。

第4回全国病院食コンテスト低カロリースイーツ部門でグランプリを受賞した「~大豆とアスパラガスの瓦焼~」
大豆とアスパラガスの瓦焼

並行し、自分たちのスキルや知識を高めるために、勉強会や学会には積極的に参加しました。栄養経営士の資格取得もその一つです。情報発信として病院の広報活動にも関わり、レシピコンテストに参加して金賞を受賞し、レシピを本に掲載していただきました。知識の向上や情報収集はもちろん、それまではほとんどなかった他院や地域とのつながりが生まれたことは、大きな刺激でした。

そうした活動を続けるなかで問題意識を強めていったのが、当院の嚥下障害に対する意識の低さです。急性期のため、嚥下障害の患者さんが占める割合はそれほど高くはありませんが、ゼロではありません。言語聴覚士がいないこともあり、誤嚥や炎症反応の上昇といった兆候が見られれば、ひとまず絶食を選択するという安易な流れがあったように思います。そうした意識を変えたいと、はじめて栄養課主催の嚥下勉強会を開催することにしました。

――院内を巻き込んでいくのは勇気が入りますよね。

そうですね。風土的に院内勉強会は活発ではなかったため大きな挑戦ではありましたが、多職種に参加していただき、意識向上に一歩前進しました。さらに、多職種が集う地域の勉強会で知り合った言語聴覚士の方から、出張で嚥下内視鏡検査ができるという情報を得て、すぐに説得材料となる資料を作成し、看護部や地域連携室、理学療法士に提案をしました。感触が良かったため、最後に医師に提案をして了承を得ることができました。

近郊病院の言語聴覚士と歯科医による訪問診療を依頼し、嚥下に問題のありそうな患者さんに対し、嚥下内視鏡検査を実施しました。これにより、患者さんとご家族に対し、エビデンスのある現状報告をできるようになったり、経口摂取の適切なタイミングを自信を持って判断できるようになりました。

現在は、看護師が直接訪問診療の依頼をかけたり、医師が食事量に着目することも増えたことで、不要な絶食が減り、以前よりは適切な食事の提供ができていると感じています。

――これからの抱負を教えて下さい。

多職種との円滑なコミュニケーションはとても大切だと思っています。相手がわかってくれないと嘆くのではなく、自分から垣根を飛び越え、相互理解が深まるよう根気強く取り組みたいですね。また、NSTの導入や病院経営についてもっと学んでいきたいと考えています。

【病院概要】

社会医療法人社団愛心館 愛心メモリアル病院

札幌市東区北27条東1丁目1-15

011-752-3535

URL https://aishinmemorial-hp.or.jp/

病床数:71床(一般)