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栄養経営実践オンラインセミナー
「褥瘡管理で目指す!管理栄養士の病棟常駐」 | 2023年7月

一つの成功症例を足掛かりとして
病棟で必要とされる管理栄養士になろう!

7月12日(水)に協会本部主催、真壁昇理事が講師を務めるセミナー褥瘡管理で目指す!管理栄養士の病棟常駐」が開催されました。平日夜の開催でしたが60名を超える申し込みがあり、褥瘡・スキン-テアに対する栄養面からのアプローチについて、管理栄養士の関心の高さがうかがえました。

日和見絶食はやめ、できる限り絶食期間を短くしよう

オープニング
オンラインセミナーの講師を務めた真壁昇理事

セミナーの冒頭、褥瘡の事例を示しながら真壁理事は「褥瘡で注目して欲しいのは周囲の発赤で、この炎症を抑えないといくら栄養を入れても褥瘡は治癒しない。黒色壊死も大事だが、発赤のコントロールを行う栄養管理が重要になる」と褥瘡治療についての基本的な考え方を示しました。

また、「2000年頃までは褥瘡は 『終末期にできる死のサイン』と言われたりしたが、今や褥瘡は治るもの。いかに予防し早く治すかという時代になった」と話し、栄養ケア・耐圧分散。局所ケアが褥瘡治癒の三本柱で、栄養状態がよければ発生予防・早期治癒が可能だと参加者に訴えました。

栄養管理の目標について、真壁理事は「除脂肪体重(リーンボディマス:/lean body mass/LBM)を保つ、または改善させること」だと考えていると述べ、除脂肪体重が10%低下時には、創傷部の回復に経口由来のタンパク質を「優先利用」、20%低下時には除脂肪体重の回復と創傷治癒に「均等利用」、それ以上低下すると除脂肪体重の回復に優先的に使用するため、創傷は悪化し創傷治癒は除脂肪体重が回復するまで遅延すると説明。「栄養管理をしていて急激に良くなったときは、除脂肪体重が改善して創傷の回復に向かうことと類似している」と指摘しました。

次に2022年に発表された褥瘡のガイドラインの内容を紹介しつつ経腸栄養の重要性と絶食が与える影響に触れ、「一日二日を無駄にしてはいけない。二、三日の絶食でも影響は大きく、とくに後半で話すスキン-テアにとってダメージが大きい。体重減少まで起きなくても、皮膚状態が悪くなる」と説明。栄養不足の状態をできるだけ早く解決することが重要で「明日には食べられるようになるだろうという希望的観測が一番危険」と訴えました。

褥瘡の予防・治癒のために必要なタンパク質量として、真壁理事は「タンパク質は常に合成と分解をくり返しており、血管内にタンパク質がある程度あることが重要」と話し、日本人のタンパク質摂取量は朝少なく夜多くなりがちですが、一定量をキープするような食事にすることを勧めました。目安量としては1.0g/kg/日以上が必要で、ただし書きとして、タンパク質を増やすと影響が出る疾患・病態については別途考慮が必要であると説明しました。

基調対談
タンパク質は3食平均的に摂取することが望ましい

スキン-テアの予防・改善には肌の保湿に加え十分な栄養と運動を!

セミナー後半ではスキン-テアについて紹介し、「介護の現場では高齢者の皮膚の状態が悪いために介助の際についた紫斑や痛みで虐待を疑われることもある」と実際に紫斑になった事例を紹介し、皮膚の健康を保つ重要性を説きました。

スキン-テアの予防として、病室ではよく乾燥肌を防ぐ塗り薬が使用されますが、ドライスキンの患者にガイドランに沿った食事を出すことで、栄養面からも改善できることを紹介。体の外面と内面の両方からのケアと、また適度に体を動かすこともドライスキンには効果的であることを説明しました。

終盤に、この日のセミナーのまとめを画像で説明した真壁理事は「成功例が1症例でもあれば病棟常駐につながるのではないか。ただ、そのためには難しい症例ではなく、きちんと結果が出せそうなものからはじめた方がいい1例目は充分に吟味して選んで欲しい」と参加者にアドバイスを送り、最後に質疑応答を行ってセミナーを終了しました。


協会本部では、今後も管理栄養士の病棟常駐に向け、理事の先生方を講師に迎えさまざまなセミナーを企画しています。次回は10月19日(木)に西岡心大理事を講師に迎えて開催する予定です。乞うご期待&皆さまどうぞ奮ってご参加ください!



参加者の感想より

「本日は貴重な講義の時間をありがとうございます。先生が最後におっしゃった「小さなことでも成功体験を、1症例でも2症例でも…」という言葉が、明日からのやる気につながりました」

「たんぱく質を1日の中で均等に摂ることが大切。実際の症例を示してくださったので、当院でも取り入れていきたい」

「これまで下腿周囲長には注目していたが、上腕周囲長にも注目していきたいと思った」

「今年から褥瘡担当となり勉強会に参加させていただきました。とても勉強になりました。今回の内容を患者さんに反映できるように努めようと思います」