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栄養経営士 活動報告| 2025年3月

学会発表はこわくない!
迷っているならぜひ口頭発表しよう

福岡みらい病院栄養科で部署長を務める河津沙耶香さん(福岡みらい病院 栄養科)は、2025年2月14・15日に開催された日本臨床栄養学会(JSPEN2025)で初の学会発表を行った。なぜ初めての発表にJSPENを選んだのか、準備の様子や実際に発表してどう感じたのかを取材した。


取りたい資格のために学会発表を決意

河津さんがJSPENでの発表を決めたのは資格取得を考えてのことだった。

「NST専門療法士の次に取ろうと考えた、がん専門療法士の資格要件に『筆頭演者での学会発表が1回以上』とあったので、どうしても発表する必要がありました。もともと病院の事務長から部署目標として学会発表を勧められており、スタッフに勧めるためにはまず自分がやらなければ、という思いもあったので、良い機会だと考えて応募しました」

初めての発表が全国規模の大会というのはかなりハードルが高いのではと感じるが、河津さん曰く「発表者が少なく、近隣の病院の人が多数参加する地方会は緊張するので、知らない人が多い全国大会のほうが気が楽だと考えました」。

資格取得の要項では「発表はポスターでも口頭でも可」とあったので、JSPENに抄録を送るときは「どちらでも可」に○をつけて提出。「口頭になったら覚悟を決めよう」と思っていたところ、口頭で採択され「もう心を決めるしかない」と腹をくくり、発表の準備を進めたそうだ。

揺れでディスポの食器や手袋が散乱した棚
JSPENの口演で演台に立つ河津沙耶香さん

部署の仲間と家族の協力で発表準備を進める

学会発表を決めたとき、河津さんが悩んだのは発表内容だった。

「今の病院で10年、ありがたいことにずっと責任者を務めています。ただ、責任者は特定の病棟を受け持たず、人手が必要なところに入るため、ひとつの症例を追い続けることができません。そこで、栄養科として携わった、緩和ケア病棟の立ち上げとその過程について発表しようと決めました」

立ち上げの際に、参考にしようと近隣病院の緩和ケア病棟へ見学に行ったものの、すでに「できあがって」いたため、そこに至るまでの過程がわからなかった。ならば「その過程を発表すれば誰かの参考になるのでは」と考え、発表内容が決まった。

それからはずっと、通勤時の車の中で骨子を考え、言いたいことを思いついたらメモ代わりに携帯に録音する日々だった。

「内容を考えていた期間が一番長くて、スライド資料等は本腰を入れてつくりはじめてから2カ月くらいで完成しました」

資料のつくり方や発表の仕方は発表経験の豊富な部下に教わるなど、部署スタッフにも協力してもらった。

日中は病院での業務があり、夜は自宅で家事・育児が待っている河津さんにとって、一番苦労したのは時間の捻出だったという。

「家ではできないので、わざわざ『今日は残業で遅くなるから』と言って家事を任せ、病院に残ってスライドをつくりました」

職場の仲間はもちろん、家族の協力なくしてはできなかった学会発表だったようだ。

コロナ罹患で準備不足ながら無事に発表終了

そうして順調に進んでいた発表準備だったが、発表直前の2月に入ったところで、河津さんがコロナに罹り予定が狂ってしまった。「予行演習で部署のスタッフに聞いてもらおうと時間をつくってもらっていたのに、1週間、職場に出られませんでした」。

「予行演習で部署のスタッフに聞いてもらおうと時間をつくってもらっていたのに、1週間、職場に出られませんでした」

ちょうど臨地実習の受け入れもしており、出勤できなかった分の仕事も溜まっていたこともあって、あまりの激務でそこからJSPENまでの記憶がほぼないという。

それでもなんとか数回の予行演習を行い、本番に挑んだ河津さん。発表が2日目の後半だったので、それまでは他の発表者の口演を見て発表の流れや雰囲気を掴み、本番に臨んだそうだ。

「準備不足で内容を覚えきれず、途中で詰まるよりはと原稿を読みながら発表しました。そこは反省点ですが、終わったときは『これで要件がクリアできた!』と胸をなでおろしました」

JSPEN質疑応答で座長からきた質問に答える河津さん
質疑応答では座長から演者に質問が飛ぶことも

発表するなら全国規模の大会で口頭発表を

実際に行う前と後で、河津さんは発表に対する見方が変わったという。

「口頭発表はすごくハードルが高いと感じ、要件が満たせるならポスターでも良いと思っていました。しかし、発表を経験した今では『発表するなら、絶対に口頭のほうが良い』と思っています」

口頭でもポスターでも内容は変わらないし、準備の大変さに大きな違いはない。ならば、口頭発表のほうが資料の用意が楽だし、一度発表してしまえば終わりだし、経歴としても箔がつく。

「それに、JSPENや日本病態栄養学会のような大会であれば、参加者が多い分、全体に占める自分の発表の割合は小さくなります。言い方は良くないかもしれませんが、万一失敗しても、何百とある演題のうちのひとつでしかない。そう考えると、参加者が少なくて一人の比重が重くなる地方会に比べて、断然気が楽です」

じつは、発表前の2024年12月の栄養経営士オンラインサロンで「学会発表時の注意事項はありますか?」と質問した河津さん。理事の先生から時間厳守や質疑応答の練習等のアドバイスとともに教わった、想定外の質問を受けたときの〝魔法の言葉〟「ご指摘ありがとうございます。今後の検討課題にしたいと思います」を知ることで、落ち着いて質疑応答に臨めたそうだ。

「これから考えている人は、ぜひポスターより口頭で、地方会より全国規模の大会での発表をお勧めします。悩んでいるなら『魔法の言葉』を握りしめて、管理栄養士のうちに経験して欲しい。とにかく、一度やってみる、ということが大事だと思います」

河津さん自身もまた大会での発表を考えており「次に出るときは発表内容をしっかり覚えて、原稿を見ずに発表したい」とリベンジに意欲を燃やしている。その際は、ぜひまた取材させていただき、ニュースでご紹介できれば幸いである。