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NME REPORT ~栄養経営士活動報告 Vol.8

栄養経営の視点と管理手法を使い
3年で栄養科の組織改革を実現

割烹板前としての経験や介護福祉施設での職務経歴も持つ栄養経営士の横田綾敦さん(上都賀厚生農業協同組合連合会上都賀総合病院)は、診療部栄養科科長に就任後の3年間で栄養部門の組織改革を行いました。その取り組み内容と手法についてお話をうかがいました。

院内報告会で栄養科の取り組みと貢献を周知

栄養経営士の横田綾敦さん
横田綾敦さん

横田さんが勤務する上都賀総合病院は栃木県鹿沼市にあり、市内唯一の急性期総合病院です。市の中心に位置し、地域密着型の病院として医療サービスを提供しています。

2019年に診療部栄養科の科長になった横田さんは、同年に取得した栄養経営士としての知識や考え方を取り入れ、将来を見据えた組織改革に乗り出しました。

同院では経営戦略とその評価のためにバランスト・スコア・カード(BSC※)を導入し、年度の初めに各部門が病院の戦略に基づいて部門ごとの目標とスコアカードを作成、年度末には院内で報告会を行っています。そこで横田さんは病院の戦略・目標に合わせ組織改革を踏まえた栄養科でのビジョンを設定( 図1)。それを元に目標を決め、さらにチームとして何ができるかまで落とし込んで明確化することで、一人ひとりの実績がわかるようにしました(図2)。

栄養科のビジョン

業務の流れ

毎年2月に行われる院内のBSC報告会で栄養科の取り組みと目標達成状況を報告、それが高く評価され、ここ数年は6 位以内をキープし院内報告会の決勝大会に進出しています。決勝大会では2回も準優勝し、BSC学会での発表も行ったそうです。

「BSC報告会での発表により、院内での管理栄養士の取り組み内容やどれだけ貢献しているかを周知徹底できました。もう『うちの管理栄養士は病院で給食つくってる』とは言わせません」と話す横田さんの言葉には、自信が感じられました。

※企業の業績を①財務業績、②顧客、③内部プロセス、④組織能力の視点で多面的に定義し、それらをバランスよくマネジメントする経営管理手法。

効率的に分業化して管理栄養士業務に専念

横田さんが行った栄養科の組織改革のなかで、一番大変だったのは業務の分業化だったと言います。

「栄養指導や栄養管理をしないと栄養科としての収益は上がらないよと口酸っぱくスタッフには伝え、栄養管理業務と給食業務が混在していたところを整理し、分業化のための表をつくりました」(図3)

栄養科のビジョン

ただし、なかには分業化に消極的なスタッフもいたようで、そんなときはBSCを活用し「病院の戦略がこういう方向性だから、栄養科としてはこうしなければ」と説得したそうです。

また、業務評価のために栄養管理委員会で栄養科の各チームの報告会を定期的に行うなど、業務に積極的にならざるを得ない環境を整えました。その結果、現在はスタッフ全員が自主的に取り組む体制ができ、スキルアップ・モチベーションアップと患者サービスの向上につながったそうです。

病棟常駐に向け準備を進めつつ後進育成も

上都賀総合病院は早くからNSTを開始し、NST研修機関にも指定されています。そのため同院の管理栄養士は全員NST研修を受けており、病棟常駐に向けてのスタッフ教育も進み、栄養サポート加算も年々上がっているそうです。

また、横田さんはスタッフに学会発表を勧めており、2022年12月に行われた第9回日本臨床栄養代謝学会関越支部学術集会では、同院の管理栄養士7名中3名が発表を行いました。他に埼玉・栃木NST研究会や日本病態栄養学会年次学術集会でも発表し、この1年で年栄養科全員が発表を行っています。

栄養科の今後の展望については「病棟配置に向けて準備を進め、チーム医療のなかでちゃんと収益を取れるようにしていかなくてはと思います。このさき業務負担が増すなかで、どこまで無駄な作業を削って適正化を図れるか、そして給食管理も強化して黒字化へとつなげたいと思います」と横田さん。

個人的な目標としては「スタッフには育った場所から外へ出て新しい経験を積むことを勧めているのですが、最近はここを任せる後進育成をはじめなければと考えるようになりました。それが進んで落ち着いたら、いつか在宅栄養管理の道に進みたいと思っています」と語ってくれました。横田さんが新しくチャレンジする際は、またぜひ活動報告でご紹介できればと思います。

栄養科のビジョン

【病院概要】

上都賀厚生農業協同組合連合会上都賀総合病院

栃木県鹿沼市下田町1丁目1033番地

URL http://www.kamituga-hp.or.jp/

診療科目:26科

病床数:352床(一般302床、精神50床)



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